岡山のコミックサロンG.I.F.Tに行ってきたよ

岡山のコミックサロンG.I.F.T.から購入した、松山洋原作・松島幸太朗画『チェイサーゲーム』きたよー。

『チェイサーゲーム』届いた!メルカリの「専用品」取引を活用して、支払い(クレジットカード)&受け取り。このために、五十路にしてはじめてメルカリに登録。

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コミックサロンG.I.F.Tは、「もう一度マンガに恋しよう!」「”一生物”のマンガに出逢えるお店」がコンセプトの、岡山初のマンガ特化型コミュニティサロン。

G.I.F.Tの入るビルの前には、こんな角柱型の看板が出てます。近くには謎のライブハウスもあったりして、お店の周囲は、サブカルなゾーンよ。

G.I.F.Tの入るビルの前には、こんな角柱型の看板が出てます。近くには謎のライブハウスもあったりして、お店の周囲は、サブカルなゾーンよ。

壁の本棚にはマンガが所狭しと並べられているが、漫画喫茶などとは違って、どんな長編マンガでもお店に置くのは原則3巻まで。自分が知らない、まだ出会ったことがないマンガと出会うための場所というコンセプトなので、まずはお試しのマンガ読書ができる空間となっている。

先月訪ねたのは、午前中大学の岡山駅前キャンパスでZoomで研究会をやって、それから午後県立図書館、岡山大学附属図書館と自転車で回って、ヘロヘロになって、休憩もかねてのこと。1時間ちょっとマンガを集中的に読みまくった(13冊読破)んだけど、集中力使った割には、終わった後はとてもさわやかな気分。

実のところ、休憩というよりも、集中的に読んだ理由は、春学期からの授業のネタ探し。「出版・マンガの著作権」では、1~2回を使って出版業界の話をするんだけど、そのネタ探しが、実のところ大きな関心。それと、春学期ゲーム業界に興味を持っているという学生が2年生ゼミ(応用演習)にやってくるとのことだったので、ここで『チェイサーゲーム』と出会えたのは、大きな収穫。タイトルと、ざくっとした内容は聞いていたんだけど、まとめ読みをして、ゲーム業界に興味を持っている学生に勧められそうなマンガだなあと思った。

こんな感じで、結構集中してマンガ読んだんだけど(だいたいいつもマンガ読む速度は、多くのマンガ読みと同じでこんなもん)、疲れたというよりは、なんかリフレッシュされた感じが残ったのは、空間の居心地のよさなんだろうなあ。飲み物のお代わりも(後述)、いいタイミングで聞いてくれるし、こちらから話しかけない限りはあまり踏み込んでこない距離感もありがたい。

店内は、マンガを読むのには困らないけど照度がそれほど高くなく、エアコンの温度もちょうどよく、居心地がよい空間づくりのおかげだと思う。研究会で頭使って、図書館で本を探してとやった疲れもふっとんで、なんだか脳みそまでスキっとした感じになった。リフレッシュの空間としてもオススメな感じ。

店主の森本さんは、Okayama Manga Kingと名刺に刷り込み、オンラインの漫画レビューサイト「マンガ新聞」でレビューを掲載する、マンガに詳しい人。あとでも説明するように、いろいろとオススメや、最近のマンガ業界のことも教えてもらって、とても勉強になった。マンガ喫茶と違うのもこういうところで、G.I.F.Tでは、店主が、自分が知らなかった、マンガの傑作、注目作、野心作、冒険作、話題作、怪作、etc.のマンガと出会う手助けをしてくれるのが、うれしい。先ほども書いたように、こちらから聞くととても親切に教えてくれて、それとなく気を配ってくれるものの、基本的に放っておいてもらえる場所なのは、あらためて強調しておきたい(つまり、知らない人が苦手な人でもあんまり怖くないよー、ということでもある笑)。

ソフトドリンク飲み放題(1000円、おつまみつき)を頼んで、ちょうどお店の棚を見ると、昨年度(2019年)のマンガ新聞大賞第1位から第10位まで並んでいたので、まずはこの10冊を読むことにした。

マンガ新聞は、オンラインのマンガのレビューメディア。「公式レビュアー」制度をとって、記者を限定してレビューの品質を確保しようという意欲をもつ。先述のように、G.I.F.Tの店主森本さんも公式レビュアーの一人。

マンガ新聞大賞は、昨年度(2019年)で3回目。昨年12月に大賞(1位)から10位までの発表があった。マンガへのリンク先は、上記マンガ新聞大賞のページから飛べるもの。

 G.I.F.Tから購入した『チェイサーゲーム』(ランキング4位)は、福岡のゲームスタジオ、サイバーコネクトツー代表取締役松山洋さんが原作。松山さんは、日本全国あちこちを回って飲み会を開いて、ゲームやアニメ、マンガなどサブカル好きの人たちと宴会を開いていて、G.I.F.Tにも毎年数回訪れている。

G.I.F.Tで、筆者は、本作の1巻を読んだんだけど、クリエイターが、ゲームづくりの現場で起こる「あるある」のトラブルを描き、併せて、その解決策や、解決しないまでも主人公たちが右往左往しつつ頑張る様子を描くことで、ゲームづくりの現場を具体的に知ることができる、という印象をもった。ゲーム作りの組織体制や、チームの連携などもわかりやすく描かれていて、ただあこがれだけでゲーム業界に就職しようとするよりも、こういうマンガを読んでおくと、ゲーム業界の現場のイメージをより具体的に持って、就活できるのでよいかなあと思う。

大賞は、実のところ、「ん?これ大賞なの」とちょっと意外な感じ。森本さんが教えてくれたところによると、マンガ新聞大賞は、宝島社の『このマンガがすごい!』のランキング(や、出版業界で読者に一番身近なところにいる書店員が選ぶマンガ大賞)などと違って、ネット投票の特徴を生かして(?)、推したい「推し」のマンガには一人何票でも複数票を入れることができるし、組織票もOKという点で、ともかくこの作品が好きで推したいという読者がいれば、多数の票を得てランキング上位に入るとのこと。なので、この大賞作品もおそらくは、強力な「推し」をした読者・ユーザーがいるんだろうなあということだった。

匿名投票の場合複数票を防ぐことが難しいという特徴は、ネット投票の信頼性の低さのしるしと考えられてきたが、それを逆手にとって、ある種個性のある「クセの強い」ランキングを実現したところは、マンガ新聞のスタッフの知恵の勝利だと思った。確かに、ほかのランキングでも上位に入賞している作品が入っているが、ざっと読んでも冒険作というか野心作というか、びっくりするような作品が入賞しているのが、マンガ新聞大賞のランキングの特徴なんだなあと思った。

第2位の作品は、ともかくびっくりした(笑)。すごい野心作。あー、確かにそういう「セクシーさ」ってあるけど、こういう感じで作品につくるかあ、うまいなあと思った。第3位は、ネットで「おもしろい、おもしろい」と聞きながらも、ストーリーや設定を聞くと、「え?何?悪魔?え、で『公安』が悪魔取り締まるの?悪魔と合体?何それ?おもしろいの、それ?」と疑問符だけが脳内を駆け巡ったのだが、実際に読んでみると、スピード感と寂寥さを感じさせる絵のタッチや、話のスピード感、ときどききらめくリリカルなシーンやセリフなどのおかげで、こうした疑問を置いてきぼりにして、確かにぐいぐい読ませる。ただ、血に弱い筆者は、「あー、モノクロの作品でよかった。カラーだったら、見ただけで死ぬる笑」というのも、偽らざるところ。第5位も、ネットの広告などで何度も目にして、「えー、何これ?この稚拙な絵は、何??これがおもしろいの?」と思った作品だが、実際に読んでみると、ざくっとした物語の骨格の頑丈さを感じさせる作品。なるほどねえと読んで納得。6位は、実は凄腕のスパイや殺し屋である登場人物たちが、幸せな家族を演じつつ、緊張感漂いまくりの日常生活を送るものの、やはり実のところは幸せで…というような、王道のストーリー。キャラクターの絵柄のかわいらしさや魅力も含めて、楽しい時間を過ごせた。7位は、クリエイターなり学者なりをやりつつ中高年を迎えた読者には、どこか身につまされるところがあるお話。世代がいくつも上のクリエイター相手に、一生懸命なんとか話をつなごうとしてしゃべりすぎてしまう若い編集者にも、同時に筆者は感情移入してしまった。8位は、数学オリンピック出場候補者だった主人公が料理の天才というお話。「いやー、でもこれ、化学や物理の知識じゃない?」とも読みながら思ったのだが、望月先生のABC予想の証明なる!というニュースがあった現在、ナイスタイミングなストーリーかもしれないので、文句言うのは控えておきます(笑)。9位は、エロ漫画誌が舞台の、バクマンまんが道?という趣の作品。主人公はエロ漫画誌の女性編集者と、文字通り「あーとかうーしか言えない」無口な女性マンガ家。エロ漫画誌というと軽く見られがちだけど、真剣に作品や雑誌に取り組み(というか、当たり前だよね)、世の中に送り出す人々を描く。これも、舞台やキャラクターの設定が、とても野心的。80年代は、「エロ」メディアが、サブカルの最先端の一つだったんだが、たぶん現在の若い人たちはそれを知らないと思う。どうしてこういうサブカル最先端になったかという雰囲気も感じてもらえると、おじさんはうれしい。10位は、70年代りぼん風の雰囲気をまとった絵柄と、現代っぽい性暴力反対/ミニスカートという「記号」への反発というモチーフで、素敵でやさしい憧れの男性がもしかしたら、アブナイ犯罪者かもしれない…というミステリーを描く作品。現代の時代的な雰囲気・気分をうまく取り込んでいると思った。絵柄が古典的な少女マンガだけど、これも一種野心作だよねえと思った。(わざと一気に書いてます。早口で読みましょう笑)

2020マンガ大賞受賞作ということで、『ブルーピリオド』(山口つばさ、講談社)を紹介してもらって、こちらも1巻を読んでみた。美大受験という、もう一つの超超エリートコースを進もうとする若者たちの群像を描く作品。受験マンガというと、『ドラゴン桜』などが有名だけど、こちらのほうが、一般の読者が知らないことが多くて、「へー、そうなんだー」と目から鱗というか、知らない世界を「学ぶ」という感覚があった。「友情・努力・勝利」という一時期のジャンプの作品スローガンじゃないけど、新しい舞台設定で「青春」というものを描こうとしているんだよなあと思った。

あと2冊読んだうち、1冊なんだっけなあと、50過ぎて記憶力が弱ったおっさんは思い出しあぐねているんだけど、残る1冊は、やはりネットで見かけた、小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』KADOKAWA)。よく知られたノンフィクション作品のコミカライズだが、不勉強・無教養の私は原作はタイトルだけ知っているけど、読んでいなかった。まんがでこの作品を初めて読むことになったわけなんだけど、戦争の、栄光や勝利などの輝かしい部分とは無縁の戦場の生活を描く。ただひたすら欠乏と、不潔、苦痛が生活の多くの領域を占めることを、視覚的に見せられるストーリー。

などなどを読んで、だいたい1時間ちょっと。これだけで、「いまの」マンガについて語ることができるとは思えないけど、ある程度「授業ネタ」は集めたかなと思う。

現在、G.I.F.Tで購入できるマンガの種類は限定されているが、Twitter経由で依頼すると、すぐに対応してくれます。料金支払い&現物送付は、メルカリ経由が便利。このために、いろんな評判におびえてなかなか手を出せなかったメルカリに登録して、「専用品」を落札して、すぐに商品が届きました。

お店でその場で購入できなくても、ネット通販等との連動などで、お店から購入でき(て、お店にも仲介料みたいなものが入る)る商品が増えていくと、G.I.F.Tの経営にも役立つだろうけど、なかなかしくみは難しそう。誰かよいアイデアがあれば、どうぞ実現してほしいなあ。