『データで読み解くスマホ・ケータイ利用トレンド2018-2019ケータイ社会白書』

ケータイ・スマホ関係のこと調べるということで、引き続き下記の本を読んだよ。

 

株式会社NTTドコモモバイル社会研究所編著(2018)『データで読み解く利用トレンド2018-2019ケータイ社会白書』中央経済社

 

同社が独自に行ったウェブ調査、訪問対面調査(若者のケータイ・スマホ利用に関する調査)、訪問質問紙留置調査(シニアのケータイ・スマホ利用に関する超)の結果をまとめた本。概説的な数十ページを除くと、あとはひたすらスマホ・ケータイ利用に関する調査結果が続く。現在のスマホ・ケータ利用状況を見るうえで非常に役立つ。

自分自身の関心から見て気になった結果について列挙。

1)数年前から感じていたが、家庭でのスマホ・ケータイのルール作りは相当に進んでいる。子ども(小中学生)との間でルールを決めていると回答した保護者は、6割以上。学年によっては9割近く。若者のスマホ・ケータイ利用に起因するトラブルを防ぐため、家庭でのスマホ・ケータイのルール作りを推奨するのは(依然大事であったとしても)、もうあまり大きな効果は見込めない。また、さらに家庭での努力を推奨すべきかどうか悩ましいところ。

 

2)ただし、中学生になると上記のルールを「守れなかったことがある」という子が4割ほどに拡大する。これもまた悩ましくて、親との決めごとを守らない、親に秘密を作るというのは、昔からあった親から精神的に自立していく過程の中の一つとも見える。だから、親子間ルールをさらに守れるように改善していこうというのは、逆に子どもの精神的自立を妨げる可能性がある。

 

3)ルールの内容に関して、利用する時間帯・利用時間に関するルールが小中学生ともに60%を超えている。中学生ではSNSサイトの訪問、音楽や動画のダウンロードが3割を超える。ここでは「ルール」によって何を守ろうとしているのかが気になる。利用時間・時間帯のルールは睡眠を含む生活時間・学習時間の確保や望ましい生活リズムの維持。SNSサイトの訪問は見知らぬ人との出会いによるトラブル(プライバシー情報の漏えい等を含む)、音楽や動画のダウンロードは利用料金超過などが防ぎたいものだろうか。いずれも生活指導としては悪くないと思うのだが、こうした家庭における生活指導について、保護者に指針となるようなものがあると助かるのかなあと思った。

 

4)フィルタリングの利用制限については、フィルタリングを利用できないという小中学生の保護者がどの年齢層にも2-3割いることが非常に気になる。購入時にはフィルタリングを行うことを義務付ける条令が多くの都道府県ですでに採用されているし、2018年2月には18歳未満のフィルタリングが法律で義務化された。以前ネットニュースで、小学生がワンクリック詐欺の被害にあって、アダルトサイトに飛ばされ、アダルトサイト利用料金を請求されるケースが多いという話があり、子どもたちのフィルタリング利用状況がどうなっているのか気になったが(ということで、調べると(というか、以前自分でつくった冊子でも書いていたので忘れているという情けない事態だ)、ネットワークフィルタリングを使っている場合自宅などのWi-Fiからのアクセスはフィルタリングされない。これは確かにありそう)、実態調査とフィルタリングに関する啓発が必要かもしれない。この啓発においては、子どもの成長に従って、フィルタリングを弱めていくことや、(成人が享受すべき)表現・言論の自由とフィルタリングの関係などに関しても、たぶん知らせていくことが重要だろう。高校現代社会の知識大事。あと、追加でフィルタリングに関する技術的知識大事>「自戒を込めて」

 

5)シニア(60代、70代)のICT利用状況に関する認識は、おそらく刷新する必要がある。ケータイ、スマホ、パソコンの所有状況を見ると、いずれも5割前後が所有し、いずれかを1つ以上所有しているという回答は9割。さらに、60代ではケータイよりもスマホの所有率が、2018年には上回っている。スマホ買い替えの理由も「使いたい機能があった」ということで、結構積極的だ。

 

6)さらに連絡手段として、60代では、友人との連絡手段で最も多いのが「ケータイ・スマホ通話」、さらに職場の仲間との連絡は「メール」となっている。LINE利用者も15%程度いる(50代のオレはLINE使っていないというのに!(笑)。スマホ・パソコン所有者に限ってみると、その4割以上が家族や友人との交流が密になると回答している。電子メールの送受信は60%近くが利用、情報検索も5割程度、地図・ナビゲーション(鉄道経路検索も含むのかな。その点この調査では不明)も4割程度が利用している。

 

7)こうした状況を考えると、高齢者は「ICTを使えない」という紋切り型の理解は間違っていると思われる。先日聴講した某シンポジウムでもそうした発言があり、自分自身の周囲を見ると「いやーそんなことないだろう」と思っていたので、上記5)と6)の結果は自分自身の認識を確認する結果だった。この数年、ご近所のシニアの方々や、大学近くのシニアの方々を見ていると、FBで結構コメントされていたり、ガラケーだけどメールを使っていたりという方がいたりしたので、「お、シニアはICTが使えない」というのは、こりゃ認識改めねばと、2年位前から思っている。

 

8)1980年代にパソコン通信が起こって、これを支えたのが現在の60-70代の人々だから、こうした人々が年を取って、さらにガラケースマホなどの比較的低価格(とはいえ、iPhone11 proって17万5000円なの?!びっくりだ)の情報機器が高機能になって、今まで情報機器を使っていなかた人も含めて仲間との連絡をどうしようかーと考えると、情報機器を活用して、さらに周囲の人々を巻き込んで、というのは当たり前にあるはずだ。なので、認識を改める必要がある。

 

9)その一方で、60代以上でもICTを活用する人々がいたとしても、なんだか日本のICT利用がいまいちなのはなんで?というのは、やはり考えなくてはいけないだろう。

 

10)たとえば、「学校でのパソコンやタブレットの使用状況」についてみると、パソコン室に生徒が使えるパソコンがあると回答する子どもは8-9割(一番回答年齢が低い小学4年生は93%)なのに対して、学校のパソコン等は1人1台以上ある、学校の授業でタブレットを使う、パソコン室に生徒が使えるタブレットがある、教室に生徒が使えるパソコンがある、教室に生徒が使えるタブレットがあるという回答がきわめて低いという状況。学校でのICT利用が非常に弱い。

 

11)実際、学外で宿題を調べるためにネットを使うというのが、中学生では5-6割で、まあまあ使っている感じ(とはいえ、これでもまだ少ないという見方はあるかもしれない)。ただし、もちろんこのとき信頼できる情報源を活用しているか、単に機械的にコピペしているだけではないのかなど、いろいろと心配すべきことはあるだろう。

 

12)また、シニアに関して「うむうむ」とうなづいたのは、シニアがシニアに対してICT利用について啓発・指導する試み。本書では、ドコモショップサーキット通り店、一般社団法人まなび考房の事例が取り上げられている。今年2月の全国消費者フォーラムこちらは、大谷の報告)では、公益社団法人日本消費生活アドバイザーコンサルタント・相談員協会(NACS)ICT リテラシー啓発グループが報告したシニアによるシニア向け情報セキュリティ教室が、類似の事例。シニアがシニアに教えるというのは、お互いどこがわかりにくいか大事かわかりやすいので、有効かつ有益な情報・知識の伝達や交流が可能になるうえ、できれば同じ地域社会に住む者同士で学びあえれば、仲間の輪が広がる。こうした試みが広がることは歓迎したい。5)~7)で指摘したような状況も、おそらくシニア同士で連絡を取りたいというニーズやワントがあったうえで、お互いに学びあい(ときには子や孫に聞いてということもあるだろう)普及している状況があるのではないか。

 

ということで、とくに子どもとシニアについてはいろいろとおもしろいことがわかって、収穫多かった。これも、ケータイ・スマホについて話せということで調べた本の一つだけど、狙いとはやっぱりちょっと違ったので、秋学期の授業のネタにしよう。

 

※12:9月23日12:25加筆修正だよー。